
今時、これほどに格調高く高雅な文体を書かれる方がどれほどおられるだろうか。私のような凡俗にはこの原稿を評するなど畏れ多く、ただ恐縮するばかりだ。襟を正したくなるほど美しい、得難い文章である。漱石好きには必読の書であろう。まことに有難い。
夏目房之介
Ⅰ
杜甫の愚直 漱石の拙
『彼岸過迄』の「雨の降る日」に─西田幾多郎と漱石
浄林の釜─子規・愚庵・漱石
『虞美人草』の頃─西園寺首相をソデにした漱石
色ということ、空ということ
ロンドンの漱石本
片付かない京都
「明暗」のお延と清子
悪妻あっぱれ─夏目鏡子と新島八重
谷崎潤一郎の漱石批判
厠の陰翳と羊羹の色
輝ける若葉 一条美子の君
Ⅱ
夏目漱石「京に着ける夕」論
─寄席・落語に始まった子規との交友
Ⅲ
「心」によせる茶会
茶道が結ぶ日本とハワイの絆
二つのメモリアル
普請の思い出
ドラという名の日本猫
落ち椿
私の京都新聞評
漱石句碑の縁
「空」を重んじる思想
養壽庵の軸を床に掛ける

昭和初期、階級思想にめざめ、プロレタリア文学運動のなかにめざした「階級」の解放と「女性」の解放。
さらに「戦争」協力をともなったゆらぎの問題が絡まったところに佐多の近代が映し出され、文学の磁場となる。
佐多稲子の文学において近代は
どのように体験されたか。
Ⅰ プロレタリア文学運動時代
第一章 「性」と「階級」の関係からみる〈女給小説〉─「怒り」・「レストラン洛陽」の位相
第二章 無産階級者というアイデンティティと女性身体―「煙草工女」・「別れ」をめぐって
Ⅱ 文学運動の敗走期から戦時下へ
第三章 新しい対関係への夢と挫折―『くれない』
第四章 運動崩壊後の揺らぎの内実―「新しい義務」から「青春陰影」への改変
第五章 「女の生活」への視点―戦時下作品の屈折の道程
第六章 「旅人」の視線という装置―「台湾の旅」
Ⅲ 戦後の再出発
第七章 戦後出発期にみる〈戦争と女性作家〉―「『女作者』」から『私の東京地図』への転回
第八章 「女性」文学における戦後民主主義の女性像―占領期の小説を中心に
第九章 戦後的自己物語化とその困難―『私の東京地図』再論
第一〇章 誰が植民地主義の責任を問うのか―「白と紫」
Ⅳ 作家としての円熟期へ
第一一章 〈同志的夫婦〉とは何者か―『灰色の午後』00
第一二章 六〇年代の短編にみる戦後民主主義の女性像のゆくえ―「哀れ」・「初秋の雨」を中心に
第一三章 もう一つの『驢馬』の物語―『夏の栞―中野重治をおくる―』
Ⅴ 関連論文
第一四章 昭和初期におけるコロンタイの恋愛観の受容
第一五章 皇民化政策の中の「アジア」―血族ナショナリズムの罠
第一六章 石牟礼道子『苦海浄土』三部作―語り手「わたくし」の母系的位相

1 日向三代・カムヤマトイハレビコの系譜にあらわれる産鉄集団の語り―「火中出生譚」を中心に
はじめに 農耕一元論的解釈からの脱却9
一 番能邇邇藝命と木花之佐久夜毘賣との聖婚・一宿妊み・三柱の神の火中出生
二 鉄王としての神倭伊波礼毗古命の系譜
2「神武記」における神武天皇の大和平定の経路と鉄産地・水銀産出地との関係
一 「神武記」における神武天皇の大和平定の経路―鉄産地と水銀産出地との関係より
二 熊野の高倉下
三 吉野水系の水銀
四 宇陀の水銀
五 「神武紀」の丹生・丹生川
付 「神武紀」における東征の経路に見られる水銀・鉄・銅の鉱物資源
3 「垂仁記」を読む―産鉄王伝承としてホムチワケの物語を読む
―「垂仁記」の物語の構成とホムチワケの鉄王的属性
一 垂仁天皇の名前、宮廷の所在地、后妃の名称とその出自、皇子女の名称
二 沙本毘古・沙本毘売の反乱と鎮圧、ならびにホムチワケの火中出生の物語
三 ホムチワケの啞と啞からの再生・復活の物語
四 旦波の四柱の女性を召す。円野比売命の死
五 多遅摩毛理関係伝承
六 石祝作、土師部のこと
七 鍛冶王としての垂仁天皇=活目入彦五十狭茅天皇とその御子たちの属性―谷川健一説を軸に
八 「垂仁記」「垂仁紀」の特異性
九 ホムチワケの火中出生に対する諸説
一〇 ホムチワケ王の誕生伝承の原型と変容 産鉄集団の聖婚と神子誕生伝承
一一 「垂仁記」の語りに見られる金属集団の痕跡
一二 ホムチワケの啞と出雲大御神の祟りの除去伝承に見られる鉄王的性格
4 「垂仁記」の伝承主体の考察
一 ホムチワケ伝承の伝承主体、鳥取部・鳥養部
二 沙本毘古・沙本毘売の叛乱伝承の伝承主体―ワニ系氏族
三 沙本毘古・沙本毘売の叛乱伝承の伝承主体―日下部系氏族
四 『日本書紀』の日下部系氏族伝承と鳥取部との結びつき―叛乱伝承の伝承主体としての日下部系氏族と産鉄集団鳥取部
5 「景行記」を読む
一 景行天皇について
二 景行天皇の御子たち
三 「景行記」の物語
四 倭建命の妻と子孫
五 『古事記』における息長田別王の系譜
6 『古事記』における息長氏の系譜と天皇の系譜
一 日子坐王・息長水依比売の系譜―「開化記」を中心に
二 景行天皇(十二代)の父、垂仁天皇の祖の系譜・后妃・御子
三 景行天皇―倭建命の (の五世孫)を中心に
四 倭建命の后妃と御子 倭建命︱息長田別の系譜
7 『古事記』における息長氏の系譜と天皇の系譜 その二
一 成務天皇(十三代)
二 仲哀天皇(十四代)
三 応神天皇(亦名 十五代)
四 仁徳天皇(十六代)
五 履中天皇 (十七代)
六 反正天皇 (十八代)
七 天皇(十九代)
八 安康天皇(二十代)
九 雄略天皇(二十一代) (大長谷命)
十 清寧天皇 (二十二代)
十一 顕宗天皇 (二十三代)
十二 仁賢天皇 (=二十四代)
十三 武烈天皇 (二十五代)
十四 継体天皇 (二十六代)
十五 安閑天皇 (二十七代)
十六 天皇 (二十八代)
十七 天皇 (二十九代)
十八 天皇 (三十代)
十九 用明天皇 ( 三十一代)
二十 崇峻天皇 (三十二代)
二十一 推古天皇 (三十三代)
8 吉野裕の『風土記世界と鉄王神話』を読む
9 谷川健一の『青銅の神の足跡』を読む
10 『群馬の思想・文学・教育』編集後記

内野信子/森野正弘/沼尻利通/太田敦子
津島昭宏/竹内正彦/岩原真代/小菅あすか
浅尾広良/髙倉明樹子/ 笹川勲/ 春日美穂
亀谷粧子/吉海直人/岡嶌偉久子/大津直子
畠山大二郎/針本正行

島尾の戦争(特攻部隊)体験、またそれに基づいた表象を
〈生〉と〈死〉の枠組みだけではなく、
〈公〉と〈個〉の両義という枠組みで捉えると何がみえてくるのか
Ⅰ
第一章——〈公〉への方法的没入─「出発は遂に訪れず」論(1)
第二章——〈公〉と〈個〉に裂かれる自画像─「その夏の今は」論(1)
Ⅱ
第三章——自画像の選択─「出発は遂に訪れず」論(2)
第四章——両義的自画像の演出─「その夏の今は」論(2)
Ⅲ
第五章——〈物語化〉の回避─「接触」論
Ⅳ
第六章——両義的自画像の起源─『魚雷艇学生』論(1)
第七章——親和と異和─『魚雷艇学生』論(2)
付
[講演]草稿からみる小説家
島尾敏雄の方法草稿画像資料 i「出発は遂に訪れず」 ii「その夏の今は」

日本文学の万葉集から現代までの和歌、短歌、俳句の歴史を中国語で解説する。
また、それぞれの時代の代表的な歌人、俳人をあげ、その作品を鑑賞する。

森鷗外論攷の集大成
鷗外にとって表現することの意味―序に代えて
第一部 総 論
一 明治文学史に於ける「めさまし草」の位相
二 鷗外はアイヌの少女・知里幸恵に会ったか
三 「偽(フェイク←ルビ)」と「事実(ファクト←ルビ)」を論じ、『能久親王事蹟』に及ぶ
四 『能久親王事蹟』論 追補
五 鷗外と自然主義
六 旅する鷗外
第二部 ゆかりの人々
一 観潮楼、遺愛の品々
二 樋口一葉と伊勢屋―生活を支えた本郷菊坂の
三 鷗外と子規・虚子との交流
四 津和野の人・安野光雅―森鷗外とともに
五 滞独時代の鷗外宛書簡
第三部 元号、謚号、即位式、大嘗祭
一 元号考
二 鷗外の元号、謚号に関する見解
三 践祚・即位式・大嘗祭
第四部 資料編
Ⅰ 書簡
Ⅱ 序文―全集未収録
Ⅲ 原稿・草稿
Ⅳ 研究ノート