新刊一覧

佐多稲子

政治とジェンダーのはざまで

小林裕子[著]

A5判上製・367頁・3800円+税
ISBN978-4-87737-459-4(21・6)

プロレタリア作家として、階級格差の原因に気づいた佐多稲子は、同時に男女差別の因ってきたる構造にも目覚めていったのではないか。「くれない」の佐多稲子はこのようにして生まれた。この論集を編むことによって、その道筋が佐多の小説の行間から立ち上ってくるように思った。──────あとがきより

佐多稲子小伝─他者という鏡
Ⅰ 詩から小説へ
詩からの出発─仮面から素面へ
小説への転身
Ⅱ プロレタリア文学の中の女たち
「女工」もの五部作─走る、泣く、揺れる「女工」たち
「煙草工女」の語りの構造─母の顔と党員の妻の顔
「別れ」─乳を搾る女
Ⅲ 戦争前夜の模索
「牡丹のある家」の位置─「くれない」につながる転換点
「樹々新緑」─目覚めと苦悩
「くれない」─政治、生活、文学の転機
Ⅳ 戦後日本の時空間
敗戦直後の評論活動─使命感とともに
「みどりの並木道」─空虚な明るさ
「夜の記憶」─二つの夜の明暗
「渓流」(一)─ある女系家族の終焉
「渓流」(二)─〈わが家〉はなぜ失われたのか
「黄色い煙」と「ばあんばあん」─時事問題の取り込み
Ⅴ 同時代の女性作家
若杉鳥子(一)─階級格差と男女格差
若杉鳥子(二)─闊達な女語りの魅力
壺井栄「廊下」─逆境の下での夫婦愛
大谷藤子「須崎屋」─母子幻想の崩壊

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村上春樹 物語を生きる

浅利文子[著]

4/6判上製本・312頁・3200円+税
ISBN978-4-87737-458-7(21・5)

〈回転のイメージ〉により現代人の自己分裂と孤絶を表象する『回転木馬のデッド・ヒート』『ノルウェイの森』『スプートニクの恋人』
「過去の記憶をいかなる歴史として受け継いでゆくか」と問う『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』

Ⅰ 齟齬と分裂の物語

第1章…自己分裂と孤絶の物語──『回転木馬のデッド・ヒート』『ノルウェイの森』『スプートニクの恋人』
第2章…「あちら側」と「こちら側」──『スプートニクの恋人』

Ⅱ 過去から引き継がれた物語

第3章…過去の責任を継承する──『海辺のカフカ』
第4章…物語論としての物語──『1Q84』
第5章…芸術論としての物語──『騎士団長殺し』
第6章…歴史を生きる魂──『騎士団長殺し』『猫を棄てる 父親について語るとき』

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狭衣物語 〈変容〉 メタモルフォーゼ

乾 澄子・萩野敦子[編]

A5判上製・328頁・7000円+税
ISBN978-4-87737-460-0(21・4)

I 『狭衣物語』と〈変容〉

井上新子◆六条御息所から狭衣へ─〈離魂表現〉に着目して
塩見香奈◆『狭衣物語』飛鳥井の姫君の〈変容〉─今姫君との対比から
佐藤達子◆『狭衣物語』における髪を削ぐこと・尼そぎになること─今姫君と女二宮をめぐって
本橋裕美◆『狭衣物語』憧憬の地としての竹生島
井上眞弓◆『狭衣物語』変態メタモルフォーゼの方法─衣物語の中の〈蟬〉

II 平安後期物語と〈変容〉

八島由香◆『浜松中納言物語』における〈空に満ちる恋心〉─転生〉とのかかわりから
宮下雅恵◆『夜の寝覚』の音声楽おんじやうがく─石山の姫君は天人の夢を見るか
乾 澄子◆『夜の寝覚』─〈変容〉メタモルフォーゼする物語
山際咲清香◆『とりかへばや物語』における寒暖語と〈風〉のメタモルフォーゼ

片山ふゆき◆『とりかへばや』英訳本における「変容」─異性装への認識をめぐる親子の物語

III さまざまな「物語」と〈変容〉

野村倫子◆『栄花物語』三后賛美評価の変容
勝亦志織◆「紫のゆかり」の〈変容〉─『いはでしのぶ』における前斎院と伏見姉妹をめぐって
萩野敦子◆近世琉球に再生する「みやびを」たち─平敷屋朝敏の擬古文物語をめぐって

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うつほ物語

子ども流離譚

富澤萌未[著]

A5判上製・296頁・6800円+税
ISBN978-4-87737-457-0(21・3)

最も古い長編の物語である『うつほ物語』
物語の周縁にあると思われてきた子どもたちの流離・受難から、物語全体の構造を捉え直す

◆第一章 
物語の始発──俊蔭の流離
◆第二章 
父に忘れられる子ども──仲忠の流離
◆第三章 
父子の密着と分離──忠こその流離
◆第四章 
父に忘れられる子ども──実忠・真砂子君と「巣」「巣守」「雛」
◆第五章 
親子関係における「恋ふ」「恋し」

第二部
子どもの位置付け──後半部における子
◆第一章 
いぬ宮の位置付け──産養から
◆第二章 
いぬ宮の位置付け──いぬ宮と母女一の宮
◆第三章 
子どもを「抱く」「膝に据う」
◆第四章 
『うつほ物語』全編における子──第一部・第二部のまとめ

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尾崎紅葉事典

山田有策・谷喜美枝・宇佐美毅・市川紘美・大屋幸世[編]

A5判上製・448頁・12000円+税
ISBN978-4-87737-455-6(20・10)

時代を賑わせた『金色夜叉』への熱狂 
近代文学誕生前夜を率いた
明治の大作家の軌跡をたどる

かつて近代文学史のテキストに〈紅露逍鷗〉という用語がしばしば登場していた。
確かに明治二〇年代初頭から明治三〇年代後半に到る時代は日本の文学や文化が近代的に整備されていく過程での混沌そのものだった。
誰もが〈近代〉を求めて、その幻影を実体化すべく悪戦苦闘せざるを得なかった。
〈紅露逍鷗〉とて例外ではなく、それぞれ、もがき苦しみ、挫折や中断を余儀なくされたのである。
その中でも最も苦闘し、ついには中途で生そのものをも犠牲にせざるを得なかったのが尾崎紅葉であった。
この紅葉の悲劇は後の文学的評価となって文学史に定着することとなった。
紅葉が短い生涯の中で情熱を傾けたさまざまな文学的行為は、逆に現代においてこそその可能性を輝かせるのではないか。
──────「はじめに」より

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