新刊一覧

文学と内なる権力

日本近代文学の諸相

矢本浩司[著]

A5判上製・384頁・4200円+税
ISBN978-4-87737-485-3(24・10)

文学は権力と主体の関係(主体化=権力化)をどのように描いてきたのか。

夏目漱石、森鷗外、伊藤左千夫、横光利一、坂口安吾、中野重治、遠藤周作らの文学を縦横に論じて、文学と権力の本質に迫る。
「中本たか子小伝」を付す。
 

はじめに─芥川龍之介「鼻」に触れつつ

Ⅰ────漱石文学の応答責任
転移する「こころ」
手記の宛先
「坊つちやん」の応答責任
漱石文学の謎 1「こころ」のハムレット/2先生の最期/3「蛇」のサブリミナル
Ⅱ────文学と権力
「高瀬舟」の〈他者〉
「野菊の墓」の寓意
「マルクスの審判」の正義
権力の表現 1「入れ札」の天皇/2「恋するザムザ」の欲望
Ⅲ────戦後の風景
「萩のもんかきや」私注 
「海と毒薬」と同時代 
「桜の森の満開の下」の主体─「羅生門」を合わせ鏡として
Ⅳ────表現の横断
表現の自由をめぐって
年上の女が先に死ぬ物語 
近代の恐怖表象 
Ⅴ────中本たか子の時代
生い立ちと上京 中本たか子小伝(一) 
活躍と左傾 中本たか子小伝(二)
拷問と入院 中本たか子小伝(三) 
服役と再出発 中本たか子小伝(四) 
戦中と終戦 中本たか子小伝(五)
 
資料紹介 中本たか子の書簡

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虚構の文色あいろドラマのありか

近代日本の小説と演劇をめぐって

宮内 淳子[著]

A5判上製・284頁・3,600円
ISBN978-4-87737-482-2 (24・8)

泉鏡花、宮澤賢治、坂口安吾、太宰治などの作品をそれぞれ夢、香り、異界、はなしといったキイワードから読み、後半では新劇の展開を、岸田國士、田中千禾夫、矢代静一、井上ひさしなどの戯曲や岡本かの子の小説などから辿ってみる。

Ⅰ─フィクションの生まれるところ
第一章 開かれた夢の力─泉鏡花「春昼」「註文帳」など
第二章 植物性の恋物語─宮澤賢治「ローマンス」をめぐって
第三章 モダニストの一軌跡─富ノ澤麟太郎とその周辺
第四章 一九三〇年代・パリの日本語─横光利一・林芙美子・森三千代の場合
第五章 フィクションとしての異界─桜の森と夜長の里
第六章 「はなし」を受け継ぐ─太宰治「破産」
Ⅱ─劇の生まれるところ
第七章 「タンタジールの死」の上演をめぐって─自由劇場・友達会の取り組み
第八章 田漢の見た日本の新劇とその影響
第九章 戯曲のことばと劇場空間─岸田國士「ママ先生とその夫」「犬は鎖に繋ぐべからず」
第一〇章 ダンスへの目覚め─岡本かの子「やがて五月に」から
第一一章 神に問うことば─田中千禾夫と矢代静一
第一二章 音楽劇における歌のはたらき─井上ひさし「太鼓たたいて笛ふいて」

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女性表象とフェミニズム

日本近現代女性文学を読む

岩淵 宏子[著]

A5判上製・552頁・4,500円+税
ISBN978-4-87737-483-9(24・7)

女性たちは何を書いてきたのか

階級、ジェンダー、セクシュアリティなどの視座から、女性文学の多様な側面に切り込む。宮本百合子を中心に、大塚楠緒子、野上彌生子、平塚らいてう、岡本かの子、林芙美子、石牟礼道子、向田邦子、角田光代らの作品を幅広く取り上げ、一世紀にわたる女性文学の内実を解き明かす、フェミニズム批評の実践。

       Ⅰ
一 フェミニズム批評

第1章 女と言説ディスクール
第2章 フェミニズム批評の有効性
第3章 フェミニズム批評・ジェンダー批評・ケアの倫理
第4章 女性文学史の新たな構築をめざして—『【新編】日本女性文学全集』全一二巻完結
       Ⅱ
二 宮本百合子とセクシュアリティ

第5章 百合子とセクシュアリティ—レズビアン表象の揺らぎ
第6章 『伸子』の素子—レズビアニズムの〈変態〉カテゴリー化に抗して
第7章 『乳房』—ジェンダー・セクシュアリティの表象
第8章 鼎談 愛と生存のかたち—湯浅芳子と百合子の場合(黒澤亜里子・沢部ひとみ・岩淵宏子)
三 宮本百合子と反戦・平和
第9章 『杉垣』にみる反戦表現—国策にあらがう〈居据り組〉夫婦
第10章 『築地河岸』『二人いるとき』—既婚女性と反戦
第11章 『鏡の中の月』『雪の後』『播州平野』をめぐって—戦争ファシズムと女性
第12章 占領下の百合子—民主化・女性の独立・反戦平和をめざして
四 宮本百合子の世界と表現方法
第13章 百合子と日本女子大学校
第14章 『伸子』—研究の変遷と今日的争点
第15章 『伸子』にみるスペイン風邪と恋—パンデミックと文学
第16章 『未開な風景』—テーマ・創作方法をめぐって
第17章 宮本百合子と佐多稲子—表現方法の差異と多様性
       Ⅲ
五 女性表象の変容

第18章 女性による樋口一葉論—三宅花圃・田辺夏子・与謝野晶子・平塚らいてう・田村俊子・長谷川時雨
第19章 大塚楠緒子『空薫』『そら炷 続編』—反家庭小説の試み
第20章 野上彌生子『噂』—揺れる家庭
第21章 求愛の表現—樋口一葉・田村俊子・宮本百合子・山田詠美
第22章 戦時下の「母性」幻想—総力戦体制の要
第23章 角田光代『八日目の蟬』にみる母と娘—母性幻想の終焉
六 フェミニズムとセクシュアリティ
第24章 『青鞜』におけるセクシュアリティの政治学への挑戦—貞操・堕胎・廃娼論争
第25章 平塚らいてうと成瀬仁蔵—『青鞜』と日本女子大学校
第26章 平塚らいてう—出発とその軌跡
第27章 田村俊子宛鈴木悦書簡をめぐって
第28章 林芙美子『ボルネオ ダイヤ』『牛肉』『骨』—売春婦たちの〈掟〉
第29章 林芙美子『晩菊』—〈老い〉とセクシュアリティ
七 社会とジェンダー
第30章 岡本かの子『生々流轉』—乞食の意味
第31章 石牟礼道子の世界—表象としての〈水俣病〉
第32章 三浦綾子『細川ガラシャ夫人』—宗教的女性像
第33章 向田邦子のまなざし—『お辞儀』『スグミル種』『はめ殺し窓』を読む

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水浜電車の客

日高昭二[著]

4/6判上製・488頁・4500円+税
ISBN978-4-87737-481-5(24・4)

大洗と水戸とを結ぶ電車に水浜電車というのがあった。水戸の高校に通うことになってはじめて乗った乗り物で、人によって水浜線とか、水浜鉄道などと呼ばれもするが、一両だけのいわゆるチンチン電車である。所要時間は、片道およそ四〇分程度だが、その乗客になってわたしは、教科書以外の文庫本や雑誌を読む自分を見出すことになった。

───────── Ⅰ ─────────
伊藤整に会わざるの記
青春ひとり芝居
「花の女子大生」という記号
小笠原克
山田昭夫
藤の七年
人の住む場所
初めての中国
滞英雑感
気まぐれ街角紀行
夕陽と歓談─花田俊典追懐
荷風・アメリカ・魯文

───────── Ⅱ ─────────
『雪明りの叢書』のこと
新しい文学世代の肖像─長田弘と清水昶
早稲田文学通史[第三次]
伊藤整
深沢七郎『甲州子守唄』
状況へ架橋する女性作家
中野美代子の現在
文芸映画鑑賞五篇
井上ひさしの戯曲「日本人のへそ」
村上春樹『羊をめぐる冒険』の「耳の女」
「伽倻子」のために
歌人大熊信行のことなど

───────── Ⅲ ─────────
筒井康隆と現代
「青春小説」の流行
現代史と文学
小檜山博『出刃』その他
遠藤周作『海と毒薬』鑑賞のてびき
松本清張『無宿人別帳』
批評理論の転回・知のプロジェクト
菊池寛
『座談の愉しみ「図書」座談集』
織田作之助
重ね書きされる戦争
安部公房『城塞』

───────── Ⅳ ─────────
文学全集「月報」八篇
文芸文庫・作家案内五篇

───────── Ⅴ ─────────
ほろ酔い詩歌紀行

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上代文学史を学ぶ

梶川 信行[著]

4/6判並製・240頁・2000円+税
ISBN978-4-87737-480-8(24・3)

文学史を再構築する試み
古事記 日本書紀 万葉集 懐風藻 風土記…
15日で学ぶ 新たな上代文学の世界

第一日 上代文学とは──概説
第二日 『古事記』──神話の世界観
第三日 『古事記』──伝承の世界
第四日 『日本書紀』──編年体で語る歴史
第五日 『万葉集』──伝承歌の位置づけ
第六日 『万葉集』──初期万葉の世界
第七日 『万葉集』──持統朝の宮廷歌
第八日 『万葉集』──聖武朝の宮廷歌
第九日 『万葉集』──文人たちの交友
第十日 『懐風藻』──東アジアの共通言語
第十一日 『万葉集』──若き文人たちの雅
第十二日 『万葉集』──渡来系の人々
第十三日 『万葉集』──天平の雅と東アジア
第十四日 『出雲国風土記』──神によって創られた国
第十五日 『日本霊異記』──神の時代から仏の時代へ

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明治三十年代 漱石・露伴・その他

文学の制度化と日露戦争

関谷 博[著]

A5判上製・416頁・4800円+税
ISBN978-4-87737-479-2(24・3)

明治三十年代における戦争、戦争と密接に関わるところの〈国民〉の想像を
革新的な問題として取り組んだ漱石・露伴の仕事の意味を中心に考える

Ⅰ───明治三十年代の文学状況
1 樗牛登場
2 樗牛のホイットマン論(明31)─漱石のホイットマン論(明25)を傍らに置いて
3 啄木における〈安楽〉
〈コラム〉一等国
4 漱石の日露戦争─「琴のそら音」(明38)と「趣味の遺伝」(明39)
5 〈国民〉の想像─漱石『夢十夜』(明41)
6 〈国民〉の文章─露伴「土偶木偶」(明38)と「普通文章論」(明41)
7 露伴の元曲研究
Ⅱ───その他
8 露伴学人
9 露伴と仏教(一)─『大詩人』復元
10 露伴と仏教(二)─説話文学としての仏典
11 露伴と仏教(三)─婦人雑誌と露伴〈華厳経三部作〉
12 露伴の『論語』注釈
〈教材研究1〉 魯迅「故郷」─「紺碧の空に金色の丸い月」
〈教材研究2〉 漱石『夢十夜』より─「第一夜」と「第六夜」の学習
〈教材研究3〉 幸田文『あとみよそわか(抄)』─〈学び〉の体験
13 小川洋子「原稿零枚日記」ノート

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