佐多稲子
昭和初期、階級思想にめざめ、プロレタリア文学運動のなかにめざした「階級」の解放と「女性」の解放。
さらに「戦争」協力をともなったゆらぎの問題が絡まったところに佐多の近代が映し出され、文学の磁場となる。
佐多稲子の文学において近代は
どのように体験されたか。
Ⅰ プロレタリア文学運動時代
第一章 「性」と「階級」の関係からみる〈女給小説〉─「怒り」・「レストラン洛陽」の位相
第二章 無産階級者というアイデンティティと女性身体―「煙草工女」・「別れ」をめぐって
Ⅱ 文学運動の敗走期から戦時下へ
第三章 新しい対関係への夢と挫折―『くれない』
第四章 運動崩壊後の揺らぎの内実―「新しい義務」から「青春陰影」への改変
第五章 「女の生活」への視点―戦時下作品の屈折の道程
第六章 「旅人」の視線という装置―「台湾の旅」
Ⅲ 戦後の再出発
第七章 戦後出発期にみる〈戦争と女性作家〉―「『女作者』」から『私の東京地図』への転回
第八章 「女性」文学における戦後民主主義の女性像―占領期の小説を中心に
第九章 戦後的自己物語化とその困難―『私の東京地図』再論
第一〇章 誰が植民地主義の責任を問うのか―「白と紫」
Ⅳ 作家としての円熟期へ
第一一章 〈同志的夫婦〉とは何者か―『灰色の午後』00
第一二章 六〇年代の短編にみる戦後民主主義の女性像のゆくえ―「哀れ」・「初秋の雨」を中心に
第一三章 もう一つの『驢馬』の物語―『夏の栞―中野重治をおくる―』
Ⅴ 関連論文
第一四章 昭和初期におけるコロンタイの恋愛観の受容
第一五章 皇民化政策の中の「アジア」―血族ナショナリズムの罠
第一六章 石牟礼道子『苦海浄土』三部作―語り手「わたくし」の母系的位相