源氏物語の遠近法と表現史
“高橋物語学”を相続する
『源氏物語』を結節点に、“高橋物語学”を特徴づける「遠近法」と「表現史」をみずからの課題として受け継いだ個性溢れる諸論稿による“星座”を、次代に向けて浮かびあがらせる試み。
いま、「高橋亨」を批判的に相続し、新たな研究の領野と地平を切り拓く。
はじめに
Ⅰ 〈語り〉と遠近法
『紫式部日記』における〈心〉への眼差し─心的遠近法の表現史の一端として◆加藤直志
天女の〈語り手〉─『源氏物語』初音巻冒頭を読む◆土居奈生子
予言する『源氏物語』─夕霧と源師房の遠近法◆安藤 徹
物語と映像の〈心的遠近法〉─『平家物語』「木曾最期」のアダプテーションとインターテクスチュアリティ◆高木 信
『児今参り物語』の〈語り〉─室町絵巻における『源氏物語』の享受と方法◆末松美咲
絵で語り、文字で描く─天理本『いはやものがたり』の絵・詞・画中詞◆江口啓子
Ⅱ 引用と表現史(1)―『源氏物語』以前
神人日本武尊─『日本書紀』のヤマトタケル◆稲生知子
『伊勢物語』五十段のなかの仏教─その「あだ」なるものの根拠◆咲本英恵
『うつほ物語』仲澄の死と手紙─『源氏物語』柏木を補助線として◆本宮洋幸
「かしづく」の語義とその展開◆東 望歩
「腹きたなし」という「継母」像の誕生─『源氏物語』「蛍」巻の「継母の腹きたなき昔物語も多かるを」を契機として◆畑 恵里子
『源氏物語』朝顔巻、『枕草子』雪山の段引用─「中宮の雪山作り」と亡霊と鎮魂◆橋本ゆかり
猫と暮らす人びと─『源氏物語』の女三宮が受け継ぐ財宝をめぐって◆亀田夕佳
Ⅲ 引用と表現史(2)―『源氏物語』以後
宇治大君の心中を語る歌ことば表現─「御すまひのかひなき山なしの花」◆内藤英子
宇治の中の君から『寝覚』の女君へ─〈女の生〉をめぐって◆乾 澄子
引用のテクスチュア─『源氏物語』浮舟巻・蜻蛉巻における〈憂し〉の物語◆本田恵美
平清盛と藤原道長─法華経供養の願文と表白から◆牧野淳司
諷喩としての「なよ竹物語」の語り─後嵯峨院の評価をめぐって◆中根千絵
『秋夜長物語』の表現と『太平記』─メトロポリタン美術館本を中心に◆鹿谷祐子
矢川澄子『兎とよばれた女』と高畑勲『かぐや姫の物語』における翻案─「自然な身体」からの離脱/への回帰◆西原志保
◆ ◆ ◆
『三体和歌』をめぐって◆高橋 亨
おわりに
